木製ひさし 施工前の状態
和風玄関の木製庇は、天井・垂木・桁(けた)・柱などの部材で構成されています。特に劣化の目だちやすい木質材は、色あせや塗膜のはがれが進行します。
木製ひさし 施工概要
木質材の仕上げ方法は、大きく分けて「エナメル仕上げ」「透明仕上げ」「浸透性塗料での着色仕上げ」に分類されます。
工法も刷毛塗りやスプレーガンによるもの、それらを併用する工法などさまざまです。
特に透明仕上げで長い間美観を保持するためには、メンテナンスが必須となります。
木質材の場合には、経年後の塗膜の状態により塗り替え周期をこまめに設定する必要がみられます。
特に外部のピーリング(化粧プリント合板)には最大限のメンテナンスが必須です。化粧合板は築浅の室内壁の場合には、クリヤー塗料での保護や美観の回復が可能ですが、外部の場合には印刷面の木目の変化が目立つようになります。
放置すれば、その後の研磨処理も難しくなり、エナメル仕上げの塗りつぶし仕様になってしまいがちです。この場合は、木目の雰囲気は皆無となります。
部位別の劣化の様子
この施工例では、構成する部材のすべてに劣化がみられます。
天井材:ピーリング【化粧合板】は、遠くからながめると板目か柾目かの判別が困難なほど表面の印刷木目が消えた状態。
垂木・桁:新築時の塗装工事では、透明塗料が薄く塗られた痕跡がみられます。鼻先部分は完全に塗膜がはがれ、雨水の浸透による変色や軽度の腐食の兆しもあります。桁には淡彩色のオイルステインで着色してから透明塗料が塗られている状態です。
柱:桁と同様、着色・透明塗料での新築時の塗装は、かなりの程度に劣化が進行し塗膜の剥離ばかりではなく、表面層の木質自体の劣化が顕著です。
木部の劣化を見る時、このような状態まで進行した場合には、表面の塗膜だけではなく脆弱化した木質部分も含め研磨処理が必要です。下地処理を中途半端にして塗り替えても旧塗膜の影響や傷んだ木の表層劣化が塗膜の下層で進行しますので、長持ちしません。
素地調整と下地処理
最初に塗る部分の清掃を行います。家屋全体の高圧洗浄では、劣化した部分に高圧水洗を加えると下地を不必要に傷めてしまう可能性が有ります。
この例では天井のピーリング(化粧合板)が相当に劣化しており、高圧洗浄による印刷面の消失が心配される状態でした。
洗浄では表面の汚れの除去程度に留め、手作業での清掃や研磨処理(ケレン)を行います。
軒先位の変色
軒先部の紫外線や雨水の影響による変色を目立たなくするために、漂白工程を行います。
漂白剤の効果を良くするためにも、下地処理の段階で表面の清掃や付着物の除去などが必要です。垂木の先端部のキャップは塗装します。仮に銅板キャップの場合にはマスキングをするか、かなり慎重に漂白剤を塗ります。
素地の粗い部分は表面の平滑化のためにも研磨処理が有効です。最初に平滑化(木地の目を詰める)を行わないと、その部分の漂白効果が目立ってしまう場合があります。大抵の場合、黒ずんでいる箇所は表面木質が劣化していますので漂白剤や塗料の吸い込み分が増します。時には割れや腐食が発生しますので早めの点検が必要です。
漂白
木部専用の漂白剤を使用ます。取扱には注意が必要で作業中にガスが発生する種類もあります。漂白工程や剥離工程では専用の役品を使う場合が多いです。使用経験の無い施工者の場合には大きな失敗を招くほど作業には経験が必要です。マスクやメガネ・ビニール手袋などが必要な場合もあります。周囲の養生も。